此処はよき道場

私達の生活は、多くの場合自分の思い通りにはならないものです。
この季節、新生活を始める人も多いと思いますが、
自分の希望どおりの道に進めなかったという人も少なくありません。
反対に、せっかく望んだ進路を歩み始めても、
案外と早くに失望してしまうこともあります。
いつもどこかにつまづきの石がある、それが人生です。
でも、試練という名の石が自分という器を気付かせてくれたりもします。
自分の器の小ささに目覚めて、一回り、二回りと器を大きくしてきた。
失敗したから今日の自分がある。
多くの先輩方は、それぞれの人生行路から同じ結論にたどり着いています。
その場合、試練はよき道場であった、といえるのではないでしょうか。

しかし一方で、こうも思います。
人生修行は我慢の場であってはならない。
特に、人間の尊厳を傷つける行為や生命を危機に陥れる暴力に対しては、
敢然と立ちあがる勇気こそが道場でありましょう。

此の処がどこであるのか、それを一義的に決めることはできません。
ただ姿勢を調えて坐り、
息を調えてゆくならば、
心も調ってくるでしょう。
そのとき、自分が立つべき道場は明らかです。
自分自身の今の立場に安住せず、惑わされず、
授かった「道場」で修行して参りましょう。