盆うち初日おわりました

今年も盆うちの季節になりました。
花栄寺の盆うちは、毎年7月第2土・日です。
今日は初日でした。

盆うちは、お檀家さん方がお寺に参詣して施食法要を厳修し、
ご先祖様の御供養をお勤めします。
このほかに、8月に入るとお盆という行持もあって、
こちらはお寺の方から各お檀家さんに出向いて
仏壇前で読経します。

昔、あるお檀家さんから聞かれました。
「なんでお盆という行事が二回もあるんだね?」
「『盆うち』というのは、『これからお盆のうちだよ』ということかね?」と。
ただ行事だからそうしているとしか考えていなかった自分には、
全く予期せぬ質問でうろたえたのも懐かしい記憶です。

その後、ある古老の方に次のような話を伺いました。

昔は、女性が他家に嫁ぐと、盆暮れは客の接待に追われたそうです。
実家に里帰りが許されるのは、正月なら小正月(1月中旬)のころ、
夏は盆うちの時期であったということです。
つまり、盆うちは嫁いだ娘が実家に戻って実家の先祖供養をする場でもあったといえます。
そうやって実家の先祖供養をしてから、婚家先でお盆を迎えるのです。

その名残は、「トドケ(届け)」という風習に見る事が出来ます。
受付で「○○家(生家の名前や屋号)のトドケです」といって御明料や斎米料を持ってこられる女性があります。
この方々が、嫁ぎ先から実家に里帰りしている人たちということになります。
今でこそ、車での往来が普通になりましたが、
かつては汽車やバスを乗り継いで、半日も一日もかけて実家に帰ったのです。
「何時間もかかって歩いて帰るのだけど、
それでも帰る事が出来るのはうれしくてね」と
あるおばあさんが懐かしんでおられるのを聞いたことがあります。

「トドケ」の人たちは婚家先に戻ってから、
実家できちんとお寺参りしてきたことを姑さんに伝えなくてはなりませんでした。
遊びに帰ったわけではないと証明が必要だったのです。
それを示すことができるように、
手ぬぐい一本など、ささやかな品を差し上げることになっていました。

現代のようにヒトとモノの行き来が自由な時代と違って、
実家に帰るにも時宜をみて多大なエネルギーを費やして、
そしておそらくは、
婚家先に少なからぬ負い目を感じながら、
女性たちが幼い子どもの手を引いて故郷に帰って来た時代があったことを
行持の中に感じながら、
明日もお勤めしてまいります。

行事(ぎょうじ)=特別の企図を持って、催しを行うこと

行持(ぎょうじ)=仏の行を持(たも)ってゆくこと

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