ともだちづきあい

今回は長女の話です。
ゴールデンなウィークに入り小学校もお休みの日が続きます。
適度に宿題が出ているようですが、
そのうちのいくつかは子どもそれぞれのペースに合わせて
自分で進める分量を決めてよいものがあります。
どうも、長女は友達と相談して
「ここまで進めよう、それ以上はしないようにね」
という約束をしてきたらしいのです。
勉強の進み具合は人それぞれなのだから
どこまで勉強するかを友達と約束しなくても良いのではないか
と諭しました。
するといきなり号泣して
「だって約束したんだもん!」と絶叫。
どうやら、年相応に人間関係も複雑になってきた模様。
約束を破ってその友達との関係が悪くなるのを恐れているのが
よく判りました。
勉強と友情とは別のものなんだということを
噛んで含ませるように説きましたが、
長女の不安そうな表情は消えませんでした。

長田弘さんの長詩で、「深呼吸の必要」
という作品があります。
その中に、並列式と直列式の人間関係の話が出てきます。
二つの豆電球と乾電池を直列式につなぐと明るさは半減します。
しかし、同じ二つの豆電球と乾電池を並列式につなぐと、明るさは保たれたまま光り輝きます。
長田さんの詩は、
それぞれの個性を打ち消すことなくお互いの違いを尊重しあう関係を結ぶ
並列式の人間関係がどんなに難しいかを描きだしていました。
たまたま、朗読されたものを収めたCDを長女と幾度となく聞いていました。
それで
「ちょうど君もそういうことに気づく時が来たんだよ」
「お父さん自身も、今でもいろいろな問題を抱えながら生きているんだよ」
という話をしました。
その表情は、硬いままでした。
不安が和らいだ様子はありませんでした。
それでも、彼女は自分自身の人生の中から学んでゆくことでしょう。

長田さんの言葉を引用させていただくと、
遠くというところは
行くことができても戻ることのできないところ
なのだそうです。
私は「あのころ」に戻ることもできないくらい遠くに来てしまった。
その喪失感が、長女が小さな胸に抱えた苦しみを
却って懐かしく、穏やかな気持ちで
見守る気持にさせるのかもしれません。

長田弘『深呼吸の必要』